「自国通貨をもつ国は、政府が通貨発行権を有する=限度なく通貨を発行できるのであるから、デフォルト(債務不履行)など起こりえない。したがって、政府は財政赤字を気にせずどんどん国債の増発=自国通貨での借金を行い、もっと積極的に財政出動して経済の安定と雇用に貢献せよ!」
このようなセンセーショナルな主張をもって、賛否両論、国内外で大きな反響を呼び起こしているMMT(現代貨幣理論)。
アメリカの経済学者ウォーレン・モズラーらがすでに1990年代に提起していた説だが、地球温暖化阻止や若者の貧困救済を訴えつつ、女性として史上最年少の当選を果たした米国民主党左派のアレクサンドリア・オカシオ・コルテス下院議員が、財源に関してこれに言及したことを機に一挙に脚光を浴びるようになった。
際限なき国債の増発は、猛烈なインフレや金利上昇を引き起こす危険性があるとの批判に対し、MMT論者のステファニー・ケルトン米ニューヨーク州立大教授が、「巨額の財政赤字でもインフレも金利上昇も起こっていない日本がMMTの正しさを証明している」と反論して日本へも賛否の議論が飛び火した。アベノミクス下の日本経済こそが、MMTの正しさの証明である、というケルトン教授の主張を真に受けるなら、日本においてMMTという「社会実験」はすでに始まっている、ということになる。
評論家で元経産官僚の中野剛志氏や立命館大学経済学部の松尾匡教授らが主唱者となってMMTの一般向けの紹介も広く行なわれ、日本経済を「大復活」させる特効薬のように取り沙汰されてきたのは周知のとおりである。
2019年7月には、ブームの火付け役となったケルトン教授自身が来日し、大勢の参加者を前に講演。会場は熱気に包まれた。
▲ステファニー・ケルトン教授(2019年7月16日、主催者提供)
大企業や一部の富裕層を優遇する政策は惜しみなく打ち出す一方、国民に対しては財政赤字を理由に緊縮財政を強要する政府に、そんな言い訳はもはや一切通用しないと詰め寄るMMT。社会保障の削減や増税に苦しむ多くの人々と、その姿に心を痛めるこれまた多くの善意の人々にとって、福音のように映じたに相違ない。
ましてや我々、日本国民は、安倍政権のもとで種々の社会保障費削減に加え、同政権が強引に取り入れた「リフレ派」経済理論――日銀による国債の大量買上を通じて市中の通貨供給量(マネタリーベース)を極限まで増やせば、これが人々の間にインフレ期待を喚起して投資活動を、ひいては経済全体を活性化させるに違いないという、非科学的な経済理論――のせいで、所得はほとんど上昇せぬままに物価だけが上がり、富裕層だけを富ませて格差が一層拡大するという最悪の状況に投げ込まれた。
しかも国債を増発しておきながら「巨額の国の借金」があり(国債を増発しているので当たり前)、その上で「社会保障制度の維持」に必要だから増税は避けられない、という建前を振りかざして、2019年10月、消費税率を8%から10%へとアップを強行し、景気の腰折れを招いた。
その約4ヶ月後に、コロナ禍が日本だけでなく、世界を襲い、2020年から2021年にかけては、コロナと伴う不況が、中国のようにコロナ禍を封じ込めた一部の国を別として、世界中を襲ったことは周知の通りである。
2021年も変異を遂げてゆくコロナウイルスとの戦い、そして経済危機は続いてゆくだろう。
しかし、主要国の中でGDPがプラス成長しているのは中国だけで、欧米日ともGDPはマイナスなのに、各国とも異次元の金融緩和と、日本の場合、日銀による株価買い支えも相まって、株価は「異常」な高値を維持している。
金融資産をもつ経済強者は、この官製相場によて、コロナ禍で「焼け太り」し、その一方で営業の制限による売り上げ減少、倒産、失業に脅える中小事業者や労働者ら、経済弱者は、経済的窮地に追い込まれている。
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もとよりMMTは、マネーの使途をどう分配するかについての理論ではない。分配について理論の提唱者らは関心がなく、そもそも貧者を救うための理論ではないので、当然ではあるのだが、このことは日本のMMT支持者たちの間では十分に知られていない。
MMTの主導者であるケルトン教授が、MMT理論の成功事例としてほめそやす安倍政権は、5年前にも「全て社会保障財源にあてる」と約束して消費税を5%から8%に上げたが、実際に社会保障費にあてられたのは増税分の2割にも満たなかった。すでに「現実化しているMMT」なるものは、この程度の代物である。
納税者の生活を支えるための財源はないと言いながら、安倍前総理は足繁く外遊して巨額のカネをばら撒き回り、トランプ米大統領におもねって「欠陥品」「効果なし」の悪評高いF35などの高額兵器を大量に購入した。また、友人の大学新学部創設のために巨額の公的資金や国有地を差し出した。税の使途についてモラルも道義も公正性もまったく見られない。
その上、経済苦を理由にした自殺者や殺人、6人に1人とも言われる子どもの貧困、そして餓死者の出現が社会問題化している中、国費を使って仲間内の高級宴会(「桜を見る会」およびその「前夜祭」)に興じていた…。
「嘘つき! 人でなし! 現実から乖離した数字を弄するだけの小難しい既存の経済理論も『財政赤字』の言い訳も、もうたくさんだ!」という苛立ちを抱く一部の人々にとって、一時期、MMTが輝ける「最終解決策」を示しているように見えたのは、無理からぬことかもしれない。
だが、リフレ派の失敗を経た我々は、焦燥感や義憤に駆られるままに「特効薬」と喧伝されるものに飛びついてはならないことを知っている。
MMTの主唱者のひとりであるL・ランダル・レイ・バード大学教授も述べるとおり、「ジョン・M・ケインズ、カール・マルクス、A・ミッチェル・イネス、ゲオルグ・ド・クナップ、アバ・ラーナー、ハイマン・ミンスキー、ワイン・ゴッドリーなど、数多くの碩学の見識の上に築かれ」、それらを現代における金融実務に即するよう「大幅にアップデートし統合」した経済理論であると胸を張る。
だが、そこから演繹される経済観や経済政策を注意深く観察すると、そこには革新的というよりは体制維持的、民主主義というよりはむしろ全体主義的な発想が垣間見えるのである。
坂本雅子・名古屋経済大学名誉教授がIWJの取材に応じて語ったところによれば、MMTもリフレ派と同じ、的外れの前提に立脚しているがゆえに、仮にMMTの政策を実施しても、日本経済の再生・安定化にはつながらないと批判する。
MMTに希望を見出す人はこう反発するかもしれない。「MMTの一体どこが間違いだというのか? 一部のエリートが自分たちだけの利益になるよう国民に思い込ませていた、国家経済の固定観念を打ち崩し、国民ひとりひとりを豊かにすることを願って提案されるMMT経済政策の、一体何をもって危ない思想だというのか?」と。
一般流布しているMMTの宣伝文句は、以下のようなものである。
「国債はいくら増発しても、国内で消化されている限り、問題はない。国債は国の借金というが、国民からすれば資産なのだ。これまでの主流経済学が心配してきた国債の大量発行→国債の信頼への信認の揺らぎ→長期金利の上昇→ハイパーインフレなど、起こらない。現代経済の体質が根本的に変わったのだ。国債を増発して、国民にバラまけばすべての問題は解決する」。
お気づきだろうが、ここでは「ハイパーインフレは起こらない」とは言っているものの、「増税はない」とは言われていない。
実際、MMT理論の主導者は複数いるが、共通しているのは、MMT理論が有効なためには2つの条件があり、ひとつは、国家に通貨発行権の主権があること、もうひとつは、国家の徴税権(あるいは徴税能力)があること、この2つなのである。
日本国内における、MMTの俗流宣伝では、このうちの徴税権について、意図的にかどうか、見落とす、あるいは言及を避ける。
「ハイパーインフレは起きない」と、国内のMMT論者は言う。しかし、MMT理論の元祖のリーダーたちは、「インフレが起きるほど貨幣の流通量が増えたら、徴税によって回収する」としれっと語っているのである。インフレが起こることは折り込み済みなのだ。果たして国内のMMT支持者らは、元祖の理論書を読んでいるのだろうか?
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よくよく考えてみる必要がある。それにはまず、MMT理論のリーダーたちの言っていることに虚心に耳を傾けるべきだ。
MMT理論の受け売り宣伝は今や巷にあふれているが、我々はここで、ケルトン教授の上記来日講演を取り上げたい。ケルトン教授の言葉にじっくり耳を傾け、その主張とロジックを丁寧に読み解く過程で、MMTがはらむ問題点がおのずと浮き彫りになるだろう。
※会員ではないので全記事は読めません。
「自国通貨をもつ国は、限度なく通貨を発行できる」
本当にそのように発言したのであればそれは間違いですね。インフレ率に制限されます。ただそのことは本人も理解しているはずですが、話の中で言及は皆無でしたか? であれば、ケルトン氏の説明不足でしたね。
「国民と同様、借金に借金を重ねる政府が世の信用を得られるわけもなく、債権市場における金利は暴騰、誰もその国の国債など買おうとはしなくなる」
しかしながら、日本政府の負債総額(国債発行残高)と金利の関係は、現実にはそうなっていません。
個人の借金と政府の負債は全く違うものです。同列には語れません。
税金の役割は以下だと考えます。
・物価の調整機能(法人税、自動安定装置)
・所得の再分配機能(所得税、格差是正)
・徴税を強制することで通貨の価値を担保する
得られた税収は当然予算として使えば良いものです。足りない分は国債発行でまかなう。税金の目的は財源ではなく、予算として執行されるのはいわば副産物です。